【コラム19】「患者さん」じゃなく、“お母さん”に戻った瞬間 髪を切っただけなのに、その人らしさが戻るって…
「最近、お母さんじゃなくなっちゃった気がして…」

その言葉が、ずっと忘れられません。
・命を守ること。
・生活を守ること。
これが最優先。
通院。
服薬。
排泄。
食事。
転倒予防。
介助。
夜中の対応。
認知症。
医療的ケア。
体調の波。
毎日、
今日を生きるだけで精一杯。
正直、髪どころじゃない。
「生きていてくれればいい」本当にそう思う。
でも同時に、どこかで感じてしまうことがある。
「なんか、お母さんじゃなくなっちゃった気がする」
もちろん、悪気なんてない。
でもいつの間にか、“お母さん”ではなく、
・「介護が必要な人」
・「認知症の人」
・「患者さん」
にみえ、そういう対応をしてしまっている気がする。
気がつけば会話も、
・「薬飲んだ?」
・「ご飯食べるよ」
・「危ないから座って」
・「それはダメ!」
・「何回も言わせないで!」
そんな“管理”する言葉ばかりが会話としてが増えていく。
・余裕なんてない。
・イライラする日もある
・怒ってしまう日もある
そして夜寝顔を見ながら、
「ごめんね」と思う。泥臭い毎日。
これが現実です。
■「髪なんて、今じゃなくていい」
こんなご家族がいました。
「正直、髪どころじゃないんです」そう言いました。
・鏡なんて見なている余裕ない
・表情なんて気にしてられない
・外にも出ないから気にならない
・髪は伸びるのが当たり前
でも、その方は、頭皮に湿疹ができ、痒そうにしている。
でも、ご家族は責められない。
毎日、命を守り、生きることで精一杯だから。
ふとした時に、
「最近、お母さんじゃないみたいで…」
その言葉に、いろんな感情が混ざっていました。
・寂しさ。
・疲れ。
・罪悪感。
・諦め。
それから、本当はどうにかしたいという気持ちはあるのに、何をしたらいいか分からない。
髪を整えたくらいで、何か変わるとも思えない。そんな空気でした。
でも、髪を切り終えそうな時に…
■「あ…お母さんだ」
髪を切り、髪を染める時間も、最初からスムーズではありません。
・疲れて途中で休む日。
・今日は気分が乗らない日。
・触られるのが嫌な日。
だから、無理させない。急がない。
その人に合う形を探す。
“普通”とかではなく、“その人に合う髪を整える最善の方法”を探す。
・声かけしてみる
・触れてみる
・目を合わせてみる。
・微笑んでみる。
ほんの少しでも、表情の変化が見えてくる。
すると、髪を切り終わったあと…
ご家族の手が止まった。
鏡を見ていたお母さんが
・少し前髪をさわったり、首を動かしたり
・少し照れたような顔をして、笑った
その瞬間、以前の「あ…お母さんだ」「久しぶりに、この顔見た」と。
その言葉のあと、娘さんも私も涙をこらえながら笑った。
私は、この瞬間、本当に師早生を感じた。
・病気が治ったわけじゃない。
・認知症がなくなったわけじゃない。
・介護がラクになったわけでもない。
でも、
・何かが少し戻った。
・部屋の空気が変わった。
・会話が少し変わった。
・「写真撮ろうか」「ちょっと外の風あたる?」
そんな言葉が出た。
そして、
今までは、“患者さん”のようだった“お母さん”が、今 ここには以前のような笑ったお母さんがにいた。
■整容は、“その人らしさ”を守ること
私は思います。
整容って、ただ髪を切ることじゃない。
ただ見た目を整えることでもない。
その人が、“私は私”と思えること。
家族が、“この人らしい”と思えること。
年齢問わず、
子どもも、成人でも、高齢者も、障がいがあっても…
認知症でも、寝たままでも、医療的ケアがあっても。
人は誰でも、“その人らしさ”があります。
そして整容には、それを少し取り戻す力がある。
私はそう思っています。
・命を守る医療。
・生活を支える介護。
そして、“その人らしく生きる”を支える整容。
それは贅沢ではなく、その人の尊厳を守る、大切なケアのひとつだと感じています。
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